総　　説

甲状腺低分化癌:疾患概念と病理診断の実際

近藤　哲夫　　　中澤　匡男　　　加藤　良平

（山梨大学医学部人体病理学講座）

要旨: 甲状腺低分化癌とは濾胞上皮を由来とする稀な悪性甲状腺腫瘍であり，その組織形態，生物学態度は比較的予後良好な分化癌と致死的な未分化癌の中間的な特徴を示す。低分化癌の概念が最初に提唱されたのは1983年のSakamotoらの報告によってであり，以後，1984年のCarcangiuらの低分化“島状”癌の報告，2004年WHO分類，2005年本邦甲状腺癌取扱い規約，2007年トリノ提案のなかで疾患概念が整理されてきた。本稿では甲状腺低分化癌の概念と定義，病理診断上の問題点と課題を解説する。

キーワード: thyroid gland, poorly differentiated carcinoma, insular carcinoma, Turin proposal

The concept of poorly differentiated thyroid carcinoma and a practical approach to the pathological diagnosis

Tetsuo Kondo, Tadao Nakazawa, and Ryohei Katoh

Department of Pathology, University of Yamanashi

（論文受付　2013年6月21日）

（採用決定　2013年6月24日）