症例報告

全身性リンパ管拡張を伴うダウン症候群の1乳児剖検例

佐藤　次生　　　和田　龍一　　　八木橋操六

（弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学講座）

要旨: ダウン症候群（DS）では，リンパ管の形成異常が報告されているがその病態は十分明らかではない。症例はDSの乳児で，先天性心疾患に対し心手術が行われた。術前に脂肪便，術後は乳び胸や腔水症が遷延し生後8ケ月で死亡した。剖検では組織学的に肺，消化管，膵臓，腎臓等の多臓器でリンパ管の拡張を認めた。リンパ管拡張を伴う臓器はリンパ経路に一致せず，その分布は不均一で，肺の一部のリンパ管壁では平滑筋の肥厚も認められた。本症例ではリンパ管の形成異常が先天的に存在し，手術を契機にリンパ流の異常が顕在化した可能性が考えられた。

キーワード: Down syndrome, generalized lymphangiectasia, chylothorax, congenital heart disease

Autopsy case of an infant with Down syndrome presenting with generalized lymphangiectasia

Tsugumi Satoh, Ryuichi Wada, and Soroku Yagihashi

Department of Pathology and Molecular Medicine, Hirosaki University Graduate School of Medicine

（論文受付　2013年1月18日）

（採用決定　2013年4月5日）