症例報告

Warthin腫瘍に濾胞性リンパ腫を合併した耳下腺腫瘍の1例

日比谷孝志　　　大田　泰徳　　　沼倉　里枝　　　木脇　圭一　　　井上　雅文　　　元木　大子　　　藤井　丈士

（虎の門病院病理診断科）

要旨: 71歳，男性。肝細胞癌に対する肝切除後，肝動脈化学塞栓療法（transcatheter arterial chemoembolization:TACE）後の経過観察中，CTにて縦隔リンパ節，右耳下腺の腫大を指摘され，耳下腺切除術が行われた。組織学的には二相性を示す上皮が管状構造をとりながら増生し，間質には明領域，暗領域の分画が不明瞭なリンパ濾胞が形成されており，濾胞構造に相当する部分にCD10, BCL2陽性であった。Warthin腫瘍の間質に濾胞性リンパ腫が合併したと考えられた。Warthin腫瘍に合併するリンパ腫は稀であり，発生母地や病理学的特徴について文献的考察を加え報告する。

キーワード: parotid gland, follicular lymphoma, Warthin tumor, BCL2 translocation, BCL6 translocation

A case of follicular lymphoma involving the Warthin tumor of the parotid gland

Takashi Hibiya, Yasunori Ota, Satoe Numakura, Keichi Kinowaki, Masafumi Inoue, Hiroko Motoki, and Takeshi Fujii

Department of Pathology, Toranomon Hospital

（論文受付　2012年12月5日）

（採用決定　2013年3月5日）