症例報告

組織黒変症（オクロノーシス）を伴ったメトヘモグロビン血症の1剖検例

宮坂　知佳¹　　　大江　知里¹　　　高橋　弘毅2　　　　北澤　康秀²　　　小宮山　豊 ³　　　鷹巣　晃昌⁴　　　中野　麗香¹　　　保坂　直樹⁵　　　坂井田紀子¹　　　植村　芳子¹

（¹関西医科大学附属枚方病院病理科，²同　救急医学科，³同　臨床検査医学科，
⁴兵庫県立尼崎病院病理診断科，⁵関西医科大学附属香里病院病理科）

要旨: 症例は50代後半，女性。既往歴，家族歴はなし。意識障害で救急搬送された。全身皮膚および体液の色調異常，代謝性アシドーシス，貧血，メトヘモグロビン血症，肝·腎機能障害，肺炎，菌血症を認め，多臓器不全にて入院8日目に死亡した。剖検で血液はチョコレート色を呈し，メトヘモグロビン血症による変化と思われたが，全身に黒色調の色素沈着がみられ，組織黒変症（オクロノーシス）と判断した。オクロノーシスはアルカプトン尿症の一症状として知られ，メトヘモグロビン血症の背景にアルカプトン尿症が存在した可能性が推測された。

キーワード: methemoglobinemia, ochronosis, autopsy case

An autopsy case of methemoglobinemia with ochronosis

Chika Miyasaka¹, Chisato Ohe¹, Hiroki Takahashi², Yasuhide Kitazawa², Yutaka Komiyama³, Kosho Takasu⁴, Yorika Nakano¹, Naoki Hosaka⁵, Noriko Sakaida¹, and Yoshiko Uemura¹

Departments of ¹Pathology, ²Acute Medicine, and ³Clinical Sciences and Laboratory Medicine, Kansai Medical University Hirakata Hospital
⁴Department of Surgical Pathology, Hyogo Prefectural Amagasaki Hospital
⁵Department of Pathology, Kansai Medical University Kori Hospital

（論文受付　2013年2月13日）

（採用決定　2013年4月1日）