症例報告

頭部に腺房細胞癌，体尾部に多嚢胞性リンパ管腫が発生した膵2重腫瘍の1例

那　日　蘇　　　岡田　真也　　　呉　　偉紅　　　藤田　浩司　　　石川　章夫　　　工藤　玄恵　　　倉田　　厚　黒田　雅彦

（東京医科大学分子病理学講座）

要旨: 膵頭部と体尾部で二つの異なる由来の腫瘍が認められた1例を報告する。患者は60代女性である。画像上，膵頭部に膵管狭窄を伴う径3cmの充実性腫瘍，膵体尾部に径10cmの多嚢胞性腫瘍がみられ，さらに肝臓に最大径7cmまでの多発性腫瘍が認められた。半年後，肝腫瘍の破裂による出血で死亡し，病理解剖にて膵頭部腫瘍は腺房細胞癌，体尾部腫瘍は多嚢胞性リンパ管腫と判明した。肝臓腫瘍は前者の転移であった。膵腺房細胞癌と膵リンパ管腫の併存例はわれわれの知る限り初めての報告例である。

キーワード: pancreas, acinar cell carcinoma, lymphangioma, imaging study

Acinar cell carcinoma in the head and lymphangioma in the body and tail of the pancreas.− a case report −

Nariso Borjigin, Shinya Okada, Weihong Wu, Koji Fujita, Akio isikawa, Motoshige Kudo, Atsushi Kurata, and Masahiko Kuroda

Department of Molecular Pathology, Tokyo Medical University

（論文受付　2012年10月31日）

（採用決定　2013年2月13日）