症例報告

胃底腺型胃癌の1例

田中　健大¹　　　市村　浩一¹　　　柳井　広之¹　　　吉野　　正²

（¹岡山大学病院病理診断科， ²岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学（腫瘍病理/第二病理））

要旨: 60歳男性。3年前に胃体中部後壁の印環細胞癌に対し，腹腔鏡補助下幽門側胃切除を施行された（T2N0M0 Stage IB）。経過観察の内視鏡で発見された噴門部大弯側の0-IIa型病変が内視鏡的粘膜切除術で摘出された。組織学的には粘膜深部を病変の主座に，好塩基性の胞体を有する異型性に乏しい細胞が，明瞭な管腔を形成しながら増殖しており，免疫組織学的にMUC6陽性，H/K-ATPase一部陽性，pepsinogen-I陽性であった。以上の所見から胃底腺型胃癌と診断した。本疾患はまれな組織型であるが，その存在を認識しておくことは重要である。

キーワード: stomach, adenocarcinoma, fundic gland type

A case of gastric adenocarcinoma of fundic gland type

Takehiro Tanaka¹, Koichi Ichimura¹, Horoyuki Yanai¹, and Tadashi Yoshino²

¹Department of Pathology, Okayama University Hospital
²Department of Pathology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

（論文受付　2012年7月10日）

（採用決定　2013年1月18日）