総  説

口腔病理のpitfallと診断クルー

田中 陽一

(東京歯科大学市川総合病院臨床検査科病理)

要旨: 口腔腫瘍の発生頻度は少ないが,多種にわたり鑑別を要する疾患も多い。口腔検体の診断に関わる機会は口腔病理医だけではなく,病理医にも多いと思われる。発生頻度が比較的高い顎骨嚢胞,嚢胞性腫瘍なども鑑別診断に苦慮することも少なくない。また診断に際して一般病理との乖離が懸念される歯科特有の診断名もある。口腔初期癌や前癌病変の扱いなど,問題も多い分野ではあるが今回は最近注目されている口腔細胞診を含め,比較的見落としされるような症例を取り上げた。とくに治療方針決定に必要な口腔の病理所見やpitfallを中心に解説した。

キーワード: Dentigerous cyst, Keratocystic odontogenic tumor, Epulis, Precancer, Oral cytology


Pitfalls and diagnostic clue in oral pathology

Yoichi Tanaka

Division of Surgical Pathology, Clinical Laboratory, Tokyo Dental College, Ichikawa General Hospital

(論文受付 2012年12月26日)

(採用決定 2013年1月18日)