症例報告

子宮の峡部（lower uterine segment）に発生したmicroglandular adenocarcinomaの1例

立野　正敏¹　　　前田　悟郎²　　　柳内　　充³　　　青木　直子⁴

（¹釧路赤十字病院病理診断科，²同　産婦人科，³市立札幌病院病理診断科，⁴旭川医科大学病理学講座）

要旨: 50代女性の子宮峡部にみられたmicroglandular adenocarcinomaの1例を報告する。癌検診で異常を指摘され内膜細胞診で悪性のため子宮両側付属器切除術が施行された。割面では子宮峡部に白色充実性腫瘍があり筋層に深く浸潤し子宮漿膜面近くまで浸潤がみられた。組織学的に粘液産生を示すmicroglandular adenocarcinomaで，頸管由来か内膜由来かが問題となった。発生部位が頸癌の発生母地と考えられている扁平上皮円柱上皮境界部から離れておりER，vimentin陽性，HPV陰性であったことなどから内膜由来の癌と考えた。最近，子宮のlower segmentから発生する腺癌の報告が増えており，臨床病理学的に通常の体癌とは区別して考えるべき疾患と考えられる。若干の文献的考察を加えて報告した。

キーワード: uterus, lower uterine segment, microglandular adenocarcinoma, vimentin, HPV

A case of microglandular adenocarcinoma of the lower uterine segment

Masatoshi Tateno¹, Goro Maeda², Mitsuru Yanai³, and Naoko Aoki⁴

Departments of ¹Pathology and ²Gynecology and Obstetrics, Kushiro Red Cross Hospital
³Department of Pathology, Sapporo City General Hospital
⁴Department of Pathology, Asahikawa Medical University

（論文受付　2012年7月19日）

（採用決定　2012年10月22日）