症例報告

右心房に発生した滑膜肉腫の1例

高田 彰子1   加島 健司1   矢田 直美1   駄阿  勉1   西田 陽登1   荒金 茂樹1   廣石 和章2   首藤 敬史3   宮本 伸二3   横山 繁生1

1大分大学医学部診断病理学講座,2同 第1外科,3同 心臓血管外科)

要旨: 60代男性の右心房に発生し,偶然発見された滑膜肉腫を経験したので報告する。肉眼的には,黄褐色,脆弱,境界明瞭な拇指頭大の腫瘍であった。組織学的にはN/C比の高い短紡錘形細胞の密な束状増殖から成り,核分裂像も散見された。免疫染色ではBCL2,CD99,上皮マーカーが陽性を示し滑膜肉腫を疑ったが,キメラ遺伝子SYT-SSXは検出できなかった。術後11ケ月,右心房壁内と前縦隔に生じた再発腫瘍からSYT-SSX1が検出され,最終的に単相線維型滑膜肉腫と診断した。心滑膜肉腫は極めて稀で,本例は術後36ケ月の長期生存が確認されている貴重な症例である。 

キーワード: heart, synovial sarcoma, SYT-SSX1


A case report of synovial sarcoma of the heart

Shoko Takata1, Kenji Kashima1, Naomi Yada1, Tsutomu Daa1, Haruto Nishida1, Motoki Arakane1, Kazuaki Hiroishi2, Takashi Shutou3, Shinji Miyamoto3, and Shigeo Yokoyama1

Departments of 1Diagnostic Pathology, 2Surgery I, and 3Cardiovascular Surgery, Faculty of Medicine, Oita University

(論文受付 2012年2月 7日)

(採用決定 2012年5月28日)