総  説

免疫染色の精度管理

伊藤 智雄

(神戸大学医学研究科病理学講座病理診断学分野,神戸大学医学部附属病院病理診断科)

要旨: 免疫染色は現在では欠かすことのできない重要技術であり,その精度管理は十分に行う必要がある。不良染色や解釈の誤りがあれば,本来あらぬ診断へと誤誘導され,極めて危険である。各病理施設は病理医と技師の間で十分なコミュニケーションを取り,日常的に精度管理を行わなければならない。両者とも十分な知識·認識を持ち,染色·解釈の技量を高める必要がある。自動免疫染色装置を使用していたとしても同様であり,機器には常にエラーが付きまとうことを認識すべきである。精度管理にはいわゆるPDCAサイクルの考え方が有効である。そのためにも全染色にコントロールを置くべきで,理想的には同じ標本上で染色すべきである。コントロール標本としては様々な組織を同時に染色可能なmulti-tissue control blockが有用で汎用性が高い。チェック時に染色結果の正しい解釈も必要であるが,意外と容易ではない。免疫染色は患者の生命を左右することもある重要なものであり,本稿では望ましい精度管理について総説する。

キーワード: imunohistitochemistry, quality control, PDCA cycle


A approach for quality control in immunohistochemistry

Tomoo Itoh, MD, PhD.

Department of Diagnostic Pathology, Kobe University Hospital

(論文受付 2012年6月 1日)

(採用決定 2012年6月12日)