症例報告

皮膚マンソン孤虫症の1例

中島　直樹¹　　　南口早智子¹　　　山田　　稔²
宮川　　文¹　　　谷岡　未樹³　　　手越　達也²
山崎　　浩⁴　　　羽賀　博典¹

（¹京都大学医学部附属病院病理診断部，²京都府立医科大学感染病態学，³京都大学医学部附属病院皮膚科，⁴国立感染症研究所寄生動物部）

要旨: 症例は80代，男性。腹部皮膚に紅色の毛包炎様丘疹を自覚し近医を受診。病変を圧出したところ紐状の物体が採取され，寄生虫感染症が疑われた。同部位の生検では，組織学的に真皮から皮下結合組織にかけて肉芽腫性病変の中に，筋組織と石灰小体を含む寄生虫様構造物が認められた。消化管と生殖器が確認されないことと，石灰小体の存在より，条虫幼虫の皮膚移行症を疑った。ホルマリン固定パラフィン包埋組織から寄生虫のcox1遺伝子の部分塩基配列を同定し，マンソン孤虫症と診断を確定した。

キーワード: skin, sparganosis mansoni, paraffin section, cox1

A case of cutaneous sparganosis mansoni

Naoki Nakajima¹, Sachiko Minamiguchi¹, Minoru Yamada², Aya Miyagawa-Hayashino¹, Miki Tanioka³， Tatsuya Tegoshi²，Hiroshi Yamazaki⁴, and Hironori Haga¹

Departments of ¹Diagnostic Pathology and ³Dermatology, Kyoto University Hospital
²Department of Medical Zoology, Kyoto Prefectural University of Medicine
⁴Department of Parasitology, National Institute of Infectious Disease

（論文受付　2012年 2月 6日）

（採用決定　2012年 4月 4日）