症例報告

神経内分泌性格を有する卵巣癌肉腫の1例

堤　　直之　　　松嶋　　惇　　　目黒　史織
上原慶一郎　　　清水　道生　　　安田　政実

（埼玉医科大学国際医療センター病理診断科）

要旨: 卵巣癌肉腫は卵巣悪性腫瘍の約1%を占める稀な疾患である。我々は，癌腫成分に神経内分泌性格を有する卵巣癌肉腫を経験した。症例は63歳女性，排尿困難を主訴に精査の結果，骨盤腔に13cm大の多嚢胞性腫瘤を認め，卵巣癌の診断にて子宮全摘出術および両側付属器切除術が施行された。組織学的に左卵巣は上皮間質成分ともに異型の強い細胞増殖を認め卵巣癌肉腫と診断した。免疫組織化学的検討では，低分化な癌腫の約10%の領域に神経内分泌性格があり一部は小細胞癌および大細胞神経内分泌癌の特徴を示した。肉腫成分の一部に軟骨様基質や，rhabdoidな成分などを認めた。術後の化学療法は行わず，腫瘍の再発に伴い術後3ケ月にて敗血症により死亡となった。

キーワード: ovary, carcinosarcoma, small cell carcinoma, Large cell neuroendocrine tumor

A case of ovarian carcinosarcoma with neuroendocrine differentiation

Naoyuki Tsutsumi, Jun Matsushima, Shiori Meguro, Keiichiro Uehara, Michio Shimizu, and Yasda Masanori

Department of Pathology, Saitama Medical University International Medical Center

（論文受付　2012年 1月10日）

（採用決定　2012年 1月25日）