症例報告

成熟嚢胞奇形腫と卵巣偽粘液腫を伴う粘液性嚢胞性腫瘍の1例

藤野　　稔¹　　　大石　善丈¹　　　阿萬　　紫¹
栗原　秀一²　　　上岡　陽亮³　　　恒吉　正澄⁴
小田　義直¹

（¹九州大学大学院医学研究院病態医学部門形態機能病理学，²福岡赤十字病院病理診断科，
³国家公務員共済組合連合会浜の町病院産婦人科，⁴福岡山王病院病理診断科）

要旨: 症例は36歳，女性。過多月経を主訴に近医を受診。MRIでダグラス窩に8.6cmの嚢胞性腫瘤と子宮に4.2cmの平滑筋腫を指摘された。卵巣皮様嚢腫，子宮筋腫の診断で子宮筋腫核出術，左卵巣嚢腫摘出術を施行された。組織学的には，成熟嚢胞奇形腫と卵巣偽粘液腫を伴う粘液性嚢胞性腫瘍の所見であった。卵巣偽粘液腫は，転移性卵巣腫瘍を示唆する所見として知られているが，奇形腫合併例では，卵巣原発粘液性腫瘍に伴ってみられることも報告されている。卵巣偽粘液腫の解釈は病理診断上重要であり，文献的考察を加えて報告する。

A case of ovarian mucinous cystic tumor with mature cystic teratoma and pseudomyxoma ovarii

Minoru Fujino¹, Yoshihiro Ohishi¹, Murasaki Aman¹, Shuichi Kurihara², Yousuke Ueoka³, Masazumi Tsuneyoshi⁴, and Yoshinao Oda¹

¹Department of Anatomic Pathology, Graduate School of Medical Sciences Kyusyu University
²Department of Diagnostic Pathology, Japanese Red Cross Fukuoka Hospital
³Department of Obstetrics and Gynecology, Hamanomachi Hospital
⁴Department of Diagnostic Pathology, Fukuoka Sanno Hospital

（論文受付　2011年5月14日）

（採用決定　2011年12月12日）