症例報告

後腹膜を原発とする粘液性腺癌の1例

竹内　正久¹　　　大石　善丈¹　　　村上　知彦²
仲池　隆史³　　　小田　義直¹

（¹九州大学大学院形態機能病理，²九州大学病院泌尿器科，³同　血液·腫瘍内科）

要旨: 50代女性の右後腹膜原発粘液性腺癌に退形成癌を伴った1例を報告する。腫瘍は11×10cmの壊死を伴う脆い黄白色充実性腫瘍で，一部に粘液を貯留した嚢胞部分を伴っていた。組織学的に嚢胞部分は粘液性嚢胞腺腫，粘液性境界悪性腫瘍からなり，中分化粘液性腺癌の破壊性浸潤を嚢胞壁に認めた。充実性部分は中分化から低分化粘液性腺癌で多形性が強く接着性を失った退形成癌に移行していた。術後2ケ月で腫瘍死となり，病理解剖の結果，卵巣，膵臓に病変を認めず，再発転移巣は退形成癌成分であった。

キーワード: retroperitoneum, mucinous adenocarcinoma, anaplastic carcinoma

A case of primary retroperitoneal mucinous adenocarcinoma

Tadahisa Takeuchi¹, Yoshihiro Ohishi¹, Tomohiko Murakami², Takashi Nakaike³, and Yoshinao Oda¹

¹Department of Anatomic Pathology, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
Departments of ²Urology and ³Hematology and Oncology, School of Medical Sciences, Kyushu University

（論文受付　2010年 8月 5日）

（採用決定　2011年 8月23日）