症例報告

精巣上体の梗塞合併アデノマトイド腫瘍の1例:病理診断のピットフォール

吉河　康二¹　　　田崎　義久²　　　羽田　真郎²

（¹独立行政法人国立病院機構別府医療センター臨床検査部，²同　腎泌尿器外科）

要旨: アデノマトイド腫瘍は精巣上体や卵管などに起こる比較的ありふれた良性腫瘍であるが，最近これに梗塞様の壊死が合併し病理診断に苦慮する例があることが知られるようになった。本報は，30代男性の精巣上体に起こったこのような病変についてその病理像を詳細に報告するとともに，病理診断における鑑別の要点を述べた。梗塞を伴うアデノマトイド腫瘍を正しく病理診断するためには，病変全体の組織構築をとらえることや病変辺縁部に壊死を免れた腫瘍細胞を見いだすことが重要と言われている。本例においては鍍銀染色により凝固壊死部分に腫瘍の骨組みが明瞭に描出されており，このことは本症の病理診断にとって重要な新知見と思われた。

キーワード: epididymis, adenomatoid tumor, infarction, myofibroblastic proliferation

A case of infarcted adenomatoid tumor of epididymis:a possible diagnostic pitfall

Yasuji Yoshikawa¹, Yoshihisa Tasaki², and Shinro Hata²

Departments of ¹Pathology and ²Urology, Beppu Medical Center, National Hospital Organization

（論文受付　2011年 5月14日）

（採用決定　2011年 7月 5日）