症例報告

大動脈原発Intimal sarcomaの1例

山田　裕一¹　　　山元　英崇¹　　　相島　慎一¹
田宮　貞史¹　　　西田　誉浩²　　　富永　隆治²
小田　義直¹

（¹九州大学大学院形態機能病理，²同　病院心臓血管外科）

要旨: 症例は20代男性。急性腹症の精査で大動脈弓部から腹部大動脈にかけての血栓様病変と左右腎梗塞，脾梗塞，上腸間膜動脈周囲の多発病変を指摘された。大動脈粘液腫の臨床診断に対し大動脈弓部置換術を施行され，術中迅速診断で大動脈悪性腫瘍と診断された。術中迅速診断では切除断端は陰性であった。術後の病理組織診断では内膜より大動脈内腔に突出した悪性紡錘形細胞腫瘍であり，Intimal sarcomaの診断となった。また，切除断端は腕頭動脈断端，左総頸動脈断端で陽性であった。術後は追加治療として化学療法を行い，術後14ケ月の時点で明らかな再発転移は見られなかった。断端陽性と多発梗塞巣のため，厳重なフォローアップが必要と考えられる1例であった。

キーワード: Intimal sarcoma, malignant aortic tumor

Intimal sarcoma of aorta;a case report

Yuichi Yamada¹, Hidetaka Yamamoto¹, Shinichi Aishima¹, Sadafumi Tamiya¹,Takahiro Nishida², Ryuji Tominaga², and Yoshinao Oda¹

Departments of ¹Anatomic Pathology and ²Cardiovascular Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University

（論文受付　2010年11月16日）

（採用決定　2011年 3月18日）