症例報告
後天性嚢胞腎随伴腎細胞癌の1例
黒田 直人1 奈路田拓史2 大江 知里3
三上 修治4 長嶋 洋治5 松嵜 理6
（1高知赤十字病院·病理診断科部，2同 泌尿器科，3関西医大枚方病院病理部，4慶応大学病院病理診断部，5横浜市立大学分子病理学部門，6君津中央病院病理）
要旨: 多発性に生じた後天性嚢胞腎随伴腎細胞癌の症例を経験したので報告する。症例は 70代，男性。慢性腎不全で，20年以上他院で血液透析を受けていたところ，フォローアップ中に腹部CTにて右腎に多発性の腫瘍が指摘され，手術が施行された。摘出腎は後天性嚢胞腎の像を呈し，暗赤色調の腫瘍が多発していた。組織学的には分類不能型，淡明細胞型が 1個ずつみられ，他の腫瘍は微小嚢胞構築を構成し，好酸性細胞質を有する腫瘍細胞からなり，腫瘍内間質に蓚酸カルシウムの沈着を伴っていた。これらは後天性嚢胞腎随伴腎細胞癌の所見に合致した。後天性嚢胞腎随伴腎細胞癌は終末腎に発生する腎腫瘍の最多の組織型である。今後一つの疾患概念として受け入れられる可能性がある。
キーワード: 腎臓，後天性嚢胞腎，腎細胞癌，蓚酸カルシウム
A case of acquired cystic disease-associated renal cell carcinoma
Naoto Kuroda1, Takushi Naroda2, Chisato Ohe3, Shuiji Mikami4, Yoji Nagashima5, and Osamu Matsuzaki6
Departments of 1Pathology and 2Urology, Kochi Red Cross Hospital
3Department of Pathology, Kansai University Hirakata Hospital
4Division of Diagnostic Pathology, Keio University Hospital
5Department of Molecular Pathology, Yokohama City University Graduate School of medicine
6Department of Pathology, Kimitsu Chuo Hospital
（論文受付 2010年12月 4日）
（採用決定 2011年 4月 8日）