症例報告

耳下腺に発生したMucoepidermoid carcinoma arising in Warthin tumorの1例

小川　郁子¹　　　武島　幸男²　　　井内　康輝²
高田　　隆³

（¹広島大学病院口腔検査センター，²広島大学大学院医歯薬学総合研究科病理学研究室，³同　口腔顎顔面病理病態学研究室）

要旨: ワルチン腫瘍は多形腺腫に次いで発生頻度の高い良性唾液腺腫瘍であるが，その悪性化は極めて稀である。症例は，67歳女性。約20年前より自覚していた右側耳下部の腫瘤の摘出術を受けた。腫瘍には，類表皮細胞，中間細胞と粘液産生細胞よりなる胞巣が浸潤性に増殖する領域と，拡張した複数の嚢胞状胞巣とリンパ性間質で構成され，被膜を有する領域が認められた。前者は粘表皮癌，後者はワルチン腫瘍と診断され，両者には連続·移行が観察されたことから，長期間経過したワルチン腫瘍の上皮の悪性化により粘表皮癌が発生したと確定した。

キーワード: parotid gland, Warthin tumor, malignant transformation, mucoepidermoid carcinoma

A case of mucoepidermoid carcinoma arising in Warthin tumor of parotid gland

Ikuko Ogawa¹, Yukio Takeshima², Kouki Inai², and Takashi Takata³

¹Center of Oral Clinical Examination, Hiroshima University Hospital
²Departments of Pathology and 3Oral and Maxillofacial Pathobiology, Graduate School of Biomedical Sciences, Hiroshima University

（論文受付　2010年 7月20日）

（採用決定　2011年 2月22日）