症例報告

涙腺の粘表皮癌の1例

松　晶子^1,2　　　川上　智子¹　　　青山　　肇¹
林　　昭伸^1,2　　　齋尾　征直^1,2　　　加治屋志郎³
谷地森隆二³　　　新濱　明彦⁴　　　澤口　昭一³
吉見　直己^1,2

（¹琉球大学医学部腫瘍病理学，²同　附属病院病理部，³同　視覚機能制御学，⁴同　耳鼻咽喉·頭部外科学）

要旨: 涙腺の粘表皮癌を経験したので文献的考察を含めて報告する。患者は38歳女性である。手術の約9ケ月前から複視と眼部圧迫感があったが，妊娠中であったため手術が9ケ月後になった。肉眼的には比較的境界明瞭な腫瘍で，組織学的には被膜形成ははっきりせず，好酸性から淡明な胞体を持つ腫瘍細胞の敷石状の増殖と一部では管腔形成がみられた。Alcian blue染色陽性の粘液もみられた。腫瘍細胞は低分子量サイトケラチンとp63陽性の部分がみられた。腫瘍細胞の周囲への浸潤性の増殖もみられ，粘表皮癌と診断された。涙腺の粘表皮癌は稀で症例報告も少ない。術後2年経過した現在，再発や転移の兆候はない。

キーワード：涙腺，Mucoepidermoid carcinoma， 免疫染色

A case of mucoepidermoid carcinoma of the lacrimal gland

Akiko Matsuzaki^1,2, Tomoko Kawakami¹, Hajime Aoyama¹, Akinobu Hayashi^1,2, Masanao Saio^1,2, Shiro Kajiya³, Ryuji Yatimori³, Akihiko Shinhama⁴, Shoichi Sawaguchi³, and Naoki Yoshimi^1,2

¹Division of Tumor Pathology, ²Division of Pathology, ³Department of Ophthalmology, and ⁴Department of Othorhinolaryngology-Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus

（論文受付　2010年12月 4日）

（採用決定　2011年 4月 8日）