症例報告

卵巣腫瘤を呈したadenomatoid tumorの1例

平野　博嗣¹　　　生橋　義之²　　　武木田茂樹²
平松　晋介²　　　中正　恵二³　　　名方　保夫⁴
寺田　信行³

（¹新日鐵広畑病院病理科，2同　産婦人科，³兵庫医科大学病理学教室，⁴千船病院病理科）

要旨: 患者は50代後半，女性。本院初診2ケ月前より下腹部痛を伴う38℃台の発熱を自覚，当院腹部CTにて右卵巣に35×30cm大の嚢胞がみられ卵管卵巣膿瘍が疑われたため右付属器摘出術が施行された。手術時，腫瘍が右尿管を巻き込んでいたが，迅速診断にて摘出された卵巣腫瘤に悪性所見がみられなかったため，右尿管周囲の病変は切除しなかった。切除された卵巣の病理組織学的検討の結果偶発的にadenomatoid tumorと漿液性嚢胞腺腫の共存が認められた。術後1ケ月が経過するが再発徴候はみられていない。本症例では尿管周囲の腫瘤の残存があり，長期にわたる経過観察が必要である。

キーワード: ovary, adenomatoid tumor, immunohistochemistry

A case of adenomatoid tumor of the ovary

Hiroshi Hirano¹, Yoshiyuki Ikuhashi², Shigeki Takekida², Shinsuke Hiramatsu², Keiji Nakasho³, Yasuo Nakata⁴, and Nobuyuki Terada³

Departments of ¹Pathology and ²Obstetrics and Gynecology, Nippon Steel Hirohata Hospital
³Department of Pathology, Hyogo College of Medicine
⁴Department of Pathology, Chibune General Hospital

（論文受付　2010年 8月 6日）

（採用決定　2010年12月13日）