症例報告

皮膚表皮嚢胞に生じた扁平上皮癌の1例
—— 当院5年間の発生頻度を含めた検討 ——

橘　　充弘¹　　　岩井　伸也²　　　寺井　　勉²

(¹市立島田市民病院病理診断科，²同　形成外科)

要旨: 約40年の経過で69歳女性の頭部皮膚表皮嚢胞内に発生した扁平上皮癌の1例を報告する。腫瘤は徐々に増大し，悪性病変が疑われたため腫瘤切除術が施行された。組織学的に表皮嚢胞より発生した浸潤性扁平上皮癌の像で，骨格筋まで浸潤し，神経線維周囲浸潤も見られた。異型は高度で，多数の核分裂像を認め，増殖マーカー陽性率が高かった。表皮嚢胞は良性毛包系嚢胞だが，稀に悪性腫瘍が発生することがある。経過の長い皮膚表皮嚢胞切除検体の病理組織的検索にあたっては，悪性化を念頭においた慎重な取り扱いが必要である。

キーワード: skin, epidermal cyst, squamous cell carcinoma

Squamous cell carcinoma arising in a cutaneous epidermal cyst: a case report

Mitsuhiro Tachibana¹, Shinya Iwai², and Tsutomu Terai²

Departments of ¹Diagnostic Pathology and ²Plastic Surgery, Shimada Municipal Hospital

(論文受付 2010年 6月11日)

(採用決定 2010年 9月 9日)