症例報告

頭部に発生した皮膚アポクリン癌の1例

伊藤しげみ¹　　　中村　保宏³　　　渡辺　みか²
笹野　公伸^2,3

(¹宮城県立がんセンター病理部，²東北大学病院病理部，³東北大学大学院医学研究科病理診断学)

要旨: 頭皮原発の充実型アポクリン癌を経験した。皮膚アポクリン癌（CAC）は，腋窩や肛門周囲などのアポクリン腺領域に発生する稀な悪性皮膚付属器腫瘍で，組織学的に多彩な構造をとることが知られている^1−4）。転移性悪性腫瘍や乳房外パジェット病（EMPD）との鑑別がしばしば問題となるため，診断に際しては臨床情報や免疫組織化学などを含めた総合的判断が重要である^5，6）。また，ホルモンレセプターやHER2/neuの発現が認められることがあり，今後乳癌やEMPDに準じた分子標的薬治療の可能性も示唆される。

キーワード: apocrine carcinoma, scalp, HER2/neu

Cutaneous apocrine carcinoma of the scalp

Shigemi Ito¹, Yasuhiro Nakamura³, Mika Watanabe², and Hironobu Sasano^2,3

¹Department of Pathology, Miyagi Cancer Center
²Department of Pathology, Tohoku University Hospital
³Anatomic Pathology Laboratory, Department of Pathology, Tohoku University School of Medicine

(論文受付 2010年 4月 5日)

(採用決定 2010年 9月29日)