症例報告

胎児母体間輸血を契機に発見した胎盤内絨毛癌の1例

有馬　信之¹　　　川瀬　昭彦²　　　近藤　裕一²

(¹熊本市立熊本市民病院臨床病理科，²同　新生児科)

要旨: 妊娠合併絨毛癌のうち最も稀な胎盤内絨毛癌を経験したので報告する。症例は胎動減少の進行とともに在胎37週5日に帝王切開にて出生した男児で，胎児母体間輸血による重症貧血と診断された。胎盤は蒼白調で多発散在する絨毛間腔血栓症とともに径24 mmの梗塞様病変があり，組織学的に細胞性ならびに合胞性栄養膜細胞からなる2相性腫瘍細胞の増生がみられ，胎盤内絨毛癌と診断した。生後6ケ月の時点で，母児ともに転移の兆候はなく経過している。胎児母体間輸血による児の貧血は絨毛構造の破綻を意味し，積極的に胎盤の病理学的検索がなされるべきである。

キーワード: placenta, fetomaternal transfusion, intraplacental choriocarcinoma, severe anemia

A case of intraplacental choriocarcinoma with fetomaternal transfusion

Nobuyuki Arima¹, Akihiko Kawase², and Yuichi Kondo²

Departments of ¹Pathology and ²Neonatology, Kumamoto City Hospital

(論文受付 2010年 2月 5日)

(採用決定 2010年 5月14日)