症例報告

脾臓原発の炎症性偽腫瘍型濾胞樹状細胞肉腫例

高橋　一徳¹　　　矢嶋　信久¹　　　中山　義人¹
水上　浩哉¹　　　和田　龍一¹　　　石黒　彩子²
賀佐富士彦²　　　八木橋操六¹

(¹弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学講座，²財団法人鳴海研究所清明会鳴海病院)

要旨: 組織球由来の腫瘍は多様な組織像を示し診断に苦慮することが多い。なかでも樹状細胞肉腫は近年確立されてきた稀な腫瘍である。今回，著者らは脾臓に発生した65歳男性の，EBER-1陽性，炎症性偽腫瘍型濾胞樹状細胞肉腫の例を経験した。本例はHodgkinリンパ腫や炎症性筋線維芽細胞腫等との鑑別が必要であり，CD23， CD35陽性が診断の鍵となった。本腫瘍にはBリンパ球由来説もあり，その原因，病態の解明には今後の症例の蓄積が必須と考えられた。ここでは，著者らの症例の病理所見を提示し，文献との比較考察を試みる。

キーワード: spleen, follicular dendritic cell sarcoma, inflammatory pseudotumor-like variant, Epstein-Barr virus-encoded RNA (EBER)

A case of splenic follicular dendritic cell sarcoma, inflammatory pseudotumor-like variant

Kazunori Takahashi¹, Nobuhisa Yajima¹, Yoshihito Nakayama¹, Hiroki Mizukami¹, Ryuichi Wada¹, Ayako Ishiguro², Fujihiko Gasa², and Soroku Yagihashi¹

¹Department of Pathology and Molecular Medicine, Hirosaki University Graduate School of Medicine, Hirosaki Japan
²Narumi Research Institute, Seimeikai-Narumi Hospital

(論文受付 2010年 1月15日)

(採用決定 2010年 5月14日)