症例報告

自己免疫性膵炎に合併した脾臓破裂の1例

神尾多喜浩¹　　　富安真二郎²　　　山村　謙介²
金光敬一郎²　　　藤山俊一郎³　　　多田　修治³
伊藤　隆明⁴

(¹済生会熊本病院中央検査部病理，²同　外科センター，³同　消化器病センター，⁴熊本大学医学部機能病理)

要旨: 症例は61歳，男性。突然腹部膨満感と嘔気が出現し，ショック状態で救急搬送された。画像上，脾臓破裂による腹腔内出血と診断され，緊急開腹術となった。摘出された脾臓には，脾実質内の出血とともに，脾門部に線維化と閉塞性静脈炎，IgG4陽性形質細胞浸潤を認めた。臨床的に自己免疫性膵炎（autoimmune pancreatitis: AIP）と診断された。AIPによる炎症が脾静脈に波及し，閉塞性静脈炎が起きたことで，脾臓のうっ血が生じ脾臓破裂が惹起されたと推察した。

キーワード: autoimmune pancreatitis, phlebitis obliterans, splenic rupture

A case of splenic rupture associated with autoimmune pancreatitis

Takihiro Kamio¹, Shinjiro Tomiyasu², Kensuke Yamamura², Keiihiro Kanemitsu², Shunichiro Fujiyama³, Shuji Tada³, and Takaaki Ito⁴

Departments of ¹Pathology, ²Surgery, and ³Gastroenterology, Saiseikai Kumamoto Hospital
⁴Department of Functional Pathology, Kumamoto University

(論文受付 2010年 5月14日)

(採用決定 2010年 7月 7日)