原　　著

生検標本にみられる腸管壁内空胞

渡辺　周一¹　　　岸田由起子²　　　田村　浩一²

(¹名古屋市立大学医学部，²東京逓信病院病理科)

要旨: 炎症性腸疾患の内視鏡検査で生検した組織内に見られる空胞について検討した。発生率は4.3%で，脂肪細胞やリンパ管との鑑別にはvimentinの免疫染色が有用であった。炎症性腸疾患では，内視鏡的に確認できない少量の壁内空胞が，従来のpseudolipomatosisの報告よりはるかに高率に発生していることが明らかとなった。医原性の合併症として問題になる例は少ないと思われるが，pseudolipomatosisの発生機序を解明するためにも，少量の空胞を見逃さないように留意すべきであると考えられた。

キーワード: intestinal biopsy, vacuole, pseudolipomatosis, pneumatosis intestinalis, colonoscopy

Vacuoles in the intestinal wall of biopsy specimens

Shuichi Watanabe¹, Yukiko Kishida², and Koichi Tamura²

¹Medical School, Nagoya City University
²Division of Pathology, Tokyo Teishin Hospital

(論文受付 2009年11月25日)

(採用決定 2010年 6月 2日)