症例報告

索状配列をし壊死のない甲状腺低分化癌の1切除例

野首　光弘¹ 　　宗雪　年孝¹　　　関根　　理²
蓬原　一茂²

(¹自治医科大学さいたま医療センター病理部，²同 一般外科)

要旨: 症例は78歳女性。腫瘤を自覚し甲状腺全摘術を受けた。腺腫様甲状腺腫を背景に右葉を占拠し肉眼的静脈塞栓を示す索状癌組織を認めた。サイログロブリン免疫染色陽性であったが弱拡大で濾胞を認めるのは癌の0.5%未満であった。核分裂像は3/10 HPF，MIB1 indexは約10%に及んだ。核膜に中等度の凹凸を認めたが，乳頭癌の核所見とは異なっていた。リンパ節転移はなかった。2005年癌取扱い規約のみならず2007年トリノ提案でも低分化癌の範疇に入る稀な症例であったが，通常みられるとされる壊死は認められなかった。

キーワード: thyroid, poorly differentiated carcinoma, trabecular carcinoma, follicular carcinoma, venous invasion

A resected case of poorly differentiated carcinoma of the thyroid showing trabecular pattern of growth without necrosis

Mitsuhiro Nokubi¹, Toshitaka Muneyuki¹, Osamu Sekine², and Kazushige Futsuhara²

Divisions of ¹Pathology and ²General Surgery, Jichi Medical University Saitama Medical Center　

(論文受付 2009年11月27日)

(採用決定 2010年 3月 4日)