症例報告

肺癌化学療法中に広範な腸管嚢腫様気腫症を合併した1剖検例

島津　宏樹¹　　　緒方　　良²　　　谷尾　吉郎²
伏見　博彰¹

(¹地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立急性期・総合医療センター病理科，²同　内科)

要旨: 肺癌に対する化学療法が行われていた70代男性。3クール目終了後28日目に発熱と血圧低下が起こり，翌日には頻脈と著明な腹部膨満が出現した。CTにて腸管が気腫性に著明に拡張，門脈内ガス貯留が認められ，腸管壊死と診断された。直後に死亡し，剖検によって胃・小腸・大腸に及ぶ腸管壊死を伴った腸管嚢腫様気腫症と診断した。本疾患は本邦でも近年報告例が増えているが，認知度は未だ低い。剖検にて指摘し臨床にフィードバックするために病理医も本疾患から致死的な転帰をたどる可能性があることを知っておかなければならない。

キーワード: gastrointestinal tract, pneumatosis cystoides intestinalis, autopsy

An autopsy case report of pneumatosis cystoides intestinalis in lung cancer patient undergoing chemotherapy

Kohki Shimazu¹, Ryo Ogata², Yoshiro Tanio², and Hiroaki Fushimi¹

Departments of ¹Pathology and ²Internal Medicine, Osaka Prefecture Hospital Organization, Osaka General Medical Center　

(論文受付 2009年12月21日)

(採用決定 2010年 3月 4日)