症例報告

肺の乳頭腺腫の1例

草野　弘宣¹　　　檜垣　浩一¹　　　野口　雅之²

(¹聖マリア病院病理科，²筑波大学大学院人間総合科学研究科診断病理学研究室)

要旨: 症例は73歳の男性。胸部CTにて陳旧性炎症性肉芽腫と考えられていた肺の結節性病変が，4年間の経過観察中に11 mmから18 mmへと増大し，確定診断のため肺の部分切除が施行された。病変は肉眼的には顆粒状，組織学的にはII型肺胞上皮様の異型立方上皮により一層に覆われた乳頭状病変であった。免疫染色ではこれらの異型細胞はSP-Aに陽性であり，また間質には弾性線維を欠いており，乳頭腺腫と診断した。肺の乳頭腺腫は手術にて完全に切除されれば予後は良好と考えられているが，その悪性度に関しては議論のあるところである。

キーワード: lung, papillary adenoma, bronchioloalveolar carcinoma, differential diagnosis

A case report of papillary adenoma of the lung

Hironori Kusano¹, Koichi Higaki¹, and Masayuki Noguchi²

¹Department of Pathology, St. Mary's Hospital
²Department of Pathology, Institute of Basic Medical Sciences, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, Tsukuba University

(論文受付 2009年 6月29日)

(採用決定 2010年 3月15日)