症例報告

先天性空腸閉鎖に合併した臍帯潰瘍の1例

有馬　信之¹　　　佐藤　　歩²　　　近藤　裕一²
石松　順嗣³　　　山本　裕俊⁴

(¹熊本市立熊本市民病院臨床病理科，²同　新生児科，³同　産科，⁴同　小児外科)

要旨: 先天性空腸閉鎖に合併した臍帯潰瘍の1例を経験した。症例は出生前より先天性上部消化管閉鎖が疑われた女児で，在胎35週2日に前期破水と血性帯下のため緊急帝王切開にて出生した。児には重症貧血がみられ，輸血が行われた。臍帯表面に黒く怒張した血管の露出がみられ，組織学的にはWharton's jellyの変性・脱落を伴う壁が菲薄化した臍帯動脈であった。臍帯潰瘍は致死的胎児救急疾患であるにもかかわらず，周産期，新生児を扱う分野以外の領域ではよく知られていない。本疾患の存在を病理医も認識しておく必要がある。

キーワード: umbilical cord ulcer, congenital intestinal atresia, Wharton's jelly

A case of umbilical cord ulceration associated with congenital jejunal atresia

Nobuyuki Arima¹, Ayumi Sato², Yuichi Kondo², Junji Ishimatsu³, and Hirotoshi Yamamoto⁴

Departments of ¹Pathology, ²Neonatology, ³Obstetrics, and ⁴Pediatric Surgery, Kumamoto City Hospital

(論文受付 2009年 8月 6日)

(採用決定 2009年10月22日)