症例報告

診断に苦慮した腎の類上皮血管筋脂肪腫の1例

柴原裕紀子¹　　　阿部　佳子²　　　佐々木光晴³
長嶋　洋治⁴　　　笹野　公伸¹

(¹東北大学大学院医学系研究科病理診断学分野，²同　病理形態学分野，³仙台赤十字病院泌尿器科，⁴横浜市立大学大学院医学系研究科分子病理学部門)

要旨: 症例は60代女性。血尿を主訴とし来院，精査で直径2 cmの右腎腫瘍が認められ，腎部分切除術が施行された。腫瘍充実部は直径1 cmで，多形性上皮様細胞の充実性増殖を示していた。免疫組織化学的に腫瘍細胞は上皮系マーカー陰性，筋系マーカー陰性であった。HMB45との反応は陰性であったが，組織形態所見から類上皮血管筋脂肪腫と診断した。類上皮血管筋脂肪腫は腎細胞癌や平滑筋肉腫との鑑別が困難である場合がある。悪性の転帰をとることや，高頻度に結節性硬化症を合併することも報告されており，術後の慎重な対応が望まれる。

キーワード: kidney, epithelioid angiomyolipoma, HMB45, c-kit

A case of Epithelioid angiomyolipoma showing negative HMB45 reactivity

Yukiko Shibahara¹, Keiko Abe², Mitsuharu Sasaki³, Yoji Nagashima⁴, and Hironobu Sasano¹

^1,2Department of Pathology, Tohoku University, School of Medicine
³Department of Urology, Sendai Red Cross Hospital
⁴Department of Molecular Pathology, Yokohama-city University, School of Medicine

(論文受付 2009年 6月18日)

(採用決定 2009年11月26日)