症例報告

主膵管内乳頭状発育を示した膵腺房細胞癌の1例

城間　紀之¹　　　有廣　光司²　　　藤井　将義²
佐々木民人³　　　茶山　一彰³

(¹広島大学医学部，²広島大学病院病理診断科，³広島大学大学院医歯薬総合研究科分子病態制御内科学)

要旨: 症例は60代，女性。約2カ月前より背部鈍痛が出現しCT検査にて膵尾部に腫瘤を指摘され，膵液細胞診にて膵腺房細胞腫瘍が疑われたため，膵体尾部切除術が施行された。組織学的に腫瘤は膵管内にとどまり大小の乳頭状あるいは不整形腺管が互いに癒合して増殖する腫瘍であり，腫瘍細胞は円柱状で好酸性顆粒状であった。免疫組織化学的に腫瘍細胞はα₁-antichymotrypsinが陽性であり，膵腺房細胞癌膵管内乳頭状亜型と診断した。その臨床病理学的特徴は未だ整理されていないが，通常型膵腺房細胞癌よりも診断時には小型腫瘤である例が多い。

キーワード: pancreas, acinar cell carcinoma, intraductal, papillary, immunohistochemistry

A case of intraductal and papillary variants of acinar cell carcinoma of pancreas

Noriyuki Shiroma¹, Koji Arihiro², Masayoshi Fujii², Tamito Sasaki³, and Kazuaki Chayama³

¹Faculty of Medicine and ³Department of Medicine and Molecular Science, Hiroshima University
²Department of Anatomical Pathology, Hiroshima University Hospital

(論文受付 2009年 9月 7日)

(採用決定 2010年 1月12日)