症例報告

糸球体内転移をきたした前立腺内分泌細胞癌の1剖検例

神尾多喜浩¹　　　森北　辰馬²　　　境　　健爾²
渡邊紳一郎³　　　町田　二郎³

(¹済生会熊本病院中央検査部病理，²同　腫瘍・糖尿病センター，³同　腎・泌尿器センター)

要旨: 症例は72歳，男性。4年前，前立腺癌と診断され，ホルモン療法が施行された。胸痛，腰痛が出現し，画像上，CTで傍大動脈リンパ節および骨盤内リンパ節の腫大を，骨シンチで肋骨・脊椎に集積像を認めた。急性腎不全が進行し，急性呼吸促迫症候群（ARDS）のため永眠された。
剖検上，前立腺は全体的に硬く白色調であり，出血・壊死を認めた。癌は膀胱頸部に結節を形成しながら浸潤し，両側尿管口を圧迫していた。両側尿管は拡張し，腎は水腎症を呈していた。組織学的に前立腺癌は内分泌細胞癌であり，膀胱，肺，胸膜，腎糸球体，骨髄，肝，膵，脾，副腎とリンパ節に浸潤および転移を認めた。急性腎不全の原因として，癌の糸球体内転移に加えて，ミオグロビン尿症による急性尿細管壊死と水腎症を考えた。

キーワード: prostate, endocrine cell carcinoma, intraglomerular metastasis

An autopsy case of endocrine cell carcinoma in the prostate with intraglomerular metastasis

Takihiro Kamio¹, Tatsuma Morikita², Kenji Sakai², Shinichiro Watanabe³, and Jiro Machida³

Departments of ¹Pathology, ²Center of tumoral medicine and diabetes mellitus, and ³Urology, Saiseikai Kumamoto Hospital

(論文受付 2009年 6月29日)

(採用決定 2009年12月 3日)