症例報告

ノルアドレナリン産生性肺癌の1剖検例

高橋さつき¹　　　白戸　　崇²　　　井田　隆夫³
木村　伯子⁴　　　齊藤　昌宏¹

(¹秋田厚生連平鹿総合病院病理診断科，²同　第二内科（現 いわき市立総合磐城共立病院循環器科)，³井田内科胃腸科医院，⁴独立行政法人国立病院機構函館病院臨床検査科)

要旨: 肺癌には異所性ホルモン産生を伴うものが知られているが，カテコールアミン産生症例の報告はない。今回，電子顕微鏡的にノルアドレナリンに一致する分泌顆粒を確認できた肺癌症例を経験した。症例は86歳男性で，高血圧と頻脈を端緒に，血中・尿中ノルアドレナリン高値が明らかとなった。褐色細胞腫が疑われたが，病巣は見つからなかった。剖検検索により，左肺下葉の大細胞神経内分泌細胞癌がノルアドレナリン産生性であることが示された。

キーワード: lung cancer, norepinephrine, neuroendocrine, electron microscope, histology

An autopsy case of lung carcinoma, producing norepinephrine

Satsuki Takahashi¹, Takashi Shiroto², Takao Ida³, Noriko Kimura⁴, and Masahiro Saito¹

Departments of ¹Diagnostic Pathology and ²Internal Medicine, Hiraka General Hospital (²Department of Cardiovascular medicine, Iwaki Kyoritsu Hospital)
³Ida Clinic
⁴Department of Pathology, Hokkaido Cardiovascular Center

(論文受付 2009年 5月15日)

(採用決定 2009年 8月 5日)