症例報告

潰瘍性大腸炎に合併した多発性直腸カルチノイドの1例

平野　博嗣^1,2　　　西上　隆之¹　　　中正　恵二¹

(¹兵庫医科大学病理学教室，²新日鐵広畑病院病理科)

要旨: 50代後半男性。患者は40代前半より17年間の潰瘍性大腸炎で加療されていたが，症状増悪により直腸の一部を残し外科的に結腸を切除した。6ケ月後難治性の肛門周囲膿瘍により会陰式直腸切除および肛門周囲膿瘍掻破が施行された。切除された直腸の病変は病理組織学的には潰瘍性大腸炎に合併した多発性微小カルチノイドであった。術後患者の症状は改善し3年が経過するがカルチノイドの再発徴候はない。潰瘍性大腸炎に大腸癌が合併することは知られているが，多発するカルチノイドの発生は稀である。今回我々は潰瘍性大腸炎の外科的切除標本中に偶然に発見された多発性カルチノイドを報告した。

キーワード: multiple microcarcinoids, ulcerative colitis, rectum

A case of multiple microcarcinoids of the rectum complicated with ulcerative colitis

Hiroshi Hirano^1,2, Takashi Nishigami¹, and Keiji Nakasho¹

¹Department of Pathology, Hyogo College of Medicine
²Department of Pathology, Nippon Steel Hirohata Hospital

(論文受付 2009年 5月12日)

(採用決定 2009年 8月 5日)