症例報告

慢性血腫との鑑別に難渋した後腹膜血管肉腫の1例

神尾多喜浩¹　　　高木　　誠²　　　菅　　守隆²
上杉　英之³　　　平山　統一³　　　工藤　康一⁴
多田　修治⁴　　　高橋　　渡⁵　　　町田　二郎⁵

(¹済生会熊本病院中央検査部病理，²同　呼吸器センター，³同　心臓血管センター，⁴同　消化器病センター，⁵同　腎・泌尿器センター)

要旨: 79歳，男性の後腹膜に発生した血管肉腫を報告する。
腹部大動脈瘤の手術歴がある。9年後，人工血管中枢側吻合部付近に後腹膜血腫を認め，腹部大動脈仮性瘤破裂と診断され，緊急手術となった。術後2ケ月，同部位に血腫が再発増大し，術後7ケ月に下血，術後10ケ月に血尿が出現した。膀胱生検で，血管肉腫と診断した。術後1年1ケ月に喀血・血痰が出現し，出血性ショックのため永眠された。剖検の結果，後腹膜原発の血管肉腫と診断し，転移は膀胱，胸膜および肺実質内，胃，右肺門部リンパ節に認めた。

キーワード: retroperitoneum, chronic hematoma, angiosarcoma

A case of angiosarcoma in the retroperitoneum mimicking chronic hematoma

Takihiro Kamio¹, Makoto Takaki², Moritaka Suga², Hideyuki Uesugi³, Touitsu Hirayama³, koichi Kudo⁴, Shuji Tada⁴, Wataru Takahashi⁵, and Jiro Machida⁵

Departments of ¹Pathology, ²Respiratory center, ³Cardiovascular center, ⁴Gastroenterology, and ⁵Urology, Saiseikai Kumamoto Hospital

(論文受付 2009年2月 9日)

(採用決定 2009年5月27日)