原　　著

乳腺基質産生癌3例の臨床病理学的検討

尾身　葉子¹　　　廣井　敦子¹　　　山本　智子¹
澤田　達男¹　　　青山　　圭²　　　神尾　孝子²
亀岡　信悟²　　　小林　槇雄¹

(¹東京女子医科大学第一病理学，²同　第二外科)

要旨: 乳腺の基質産生癌3例の臨床病理学的検討を行った。組織学的には全例で癌の上皮成分は低分化で，腋窩リンパ節転移を認めた1例では，転移巣に化生成分はみられなかった。全例でホルモン感受性は陰性で，HER2 scoreはリンパ節転移を認めた1例で2+であり，他の2例では0であった。上皮成分は，Keratinとp53が陽性であることが多く，化生成分では，p63が陽性であった。S-100タンパクは，両成分で陽性であった。Ki-67 Indexは上皮成分で化生成分より高値を示した。以上から基質産生癌では，上皮成分と化生成分で癌としての性格や悪性度に差があると考えられた。

キーワード: Breast, matrix producing carcinoma, cartilaginous metaplasia, immunohistochemistry

Clinicopathological analysis of 3 cases of matrix producing carcinoma

Yoko Omi¹, Atsuko Hiroi¹, Tomoko Yamamoto¹, Tatsuo Sawada¹, Kei Aoyama², Takako Kamio², Shingo Kameoka², and Makio Kobayashi¹

Departments of ¹Pathology and ²2^nd Department of Surgery, Tokyo Women's Medical University

(論文受付 2009年4月23日)

(採用決定 2009年6月17日)