症例報告

顎下腺原発脂腺癌の1例

小林実喜子¹　　　佐野　健司¹　　　増本　純也²
上原　　剛¹　　　福岡　久邦³　　　本田　孝行¹

(¹信州大学医学部附属病院臨床検査部，²信州大学医学部病理組織学講座，³信州大学医学部附属病院耳鼻咽喉科)

要旨: 47歳男性の左顎下腺に発生した脂腺癌の1例を報告する。腫瘍は左顎下腺から周囲筋肉，脂肪織に浸潤性発育する25 mm大の白色充実性病変で，組織学的には淡明細胞を主体とし，これを扁平上皮様細胞が取り囲む大小の胞巣からなっていた。ほとんどの淡明細胞は脂肪染色に小滴状の陽性所見を呈しており，顎下腺原発の脂腺癌と診断した。なお腫瘍内には，骨化を伴う硝子化結節を認めた。同部に筋上皮への分化を示す細胞は確認できなかったが，多形腺腫由来の脂腺癌の可能性が示唆された。

キーワード: submandibular gland, sebaceous carcinoma, carcinoma ex pleomorphic adenoma

A case of sebaceous carcinoma in the submandibular gland

Mikiko Kobayashi¹, Kenji Sano¹, Junya Masumoto², Takeshi Uehara¹, Hisakuni Fukuoka³, and Takayuki Honda¹

Departments of ¹Laboratory Medicine and ³Otorhinolaryngology, Shinshu University Hospital

(論文受付 2008年11月12日)

(採用決定 2009年 4月 9日)