症例報告

上顎に発症した脱分化型腺様嚢胞癌の1例

橋本　和樹¹　　　山元　英崇¹　　　瀬川　祐一¹
白土　秀樹²　　　恒吉　正澄¹

(¹九州大学大学院医学研究院形態機能病理学，²同　耳鼻咽喉科学)

要旨: 上顎に発症した脱分化型腺様嚢胞癌の1例を経験した。症例は72歳男性。左上顎洞から骨破壊を伴って鼻腔，口腔内へと進展する腫瘍を認め，上顎洞試験開窓術が施行された。腫瘍は組織学的に異なった二つの成分から構成されており，定型的腺様嚢胞癌成分と核異型，核分裂像が著明な高悪性度の癌腫成分が一部で移行像を伴って併存してみられ，脱分化型腺様嚢胞癌と診断された。脱分化型腺様嚢胞癌は発症頻度が低く，予後が悪い傾向にあるため正確な病理学的診断が必要と考えられる。

キーワード: maxilla, adenoid cystic carcinoma, dedifferentiation, salivary gland tumor

A case of dedifferentiated adenoid cystic carcinoma of the maxilla

Kazuki Hashimoto¹, Hidetaka Yamamoto¹, Yuichi Segawa¹, Hideki Shiratsuchi², and Masazumi Tsuneyoshi¹

Departments of ¹Anatomic Pathology and ²Otorhinolaryngology, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University

(論文受付 2009年 2月 9日)

(採用決定 2009年 4月 6日)