症例報告

原発癌の肉眼像を呈した肺癌直腸転移の1例

波多野まみ¹　　　岸田由起子²　　　北原　英晃³
梅谷　直亨³　　　北川　　剛³　　　津久井　元³
森田　博義³　　　寺島　裕夫³　　　田村　浩一²

(¹大分大学医学部医学科，²東京逓信病院病理科，³同　第一外科)

要旨: 症例は60代男性，3年前に多発性肺癌で肺部分切除術を受けている。今回，直腸に腫瘍が見つかり低位前方切除術が施行された。肉眼的には陥凹を伴う2型病変で，腫瘍は粘膜面を中心に増生しており，原発性直腸癌として矛盾のない所見であった。組織学的には好酸性の胞体と明るい核を持つ異型細胞が充実性・索状構造をとり増生し，一部は漿膜表面に露出していた。免疫組織化学ではCK20陰性で，CK7，TTF-1およびSP-Aが陽性であり，原発性肺癌の直腸転移と診断した。肺癌の大腸転移は稀であり，本症例では原発性直腸癌と紛らわしい肉眼所見を呈した例として報告する。

キーワード: rectum, metastatic rectal carcinoma, type 2 tumor, primary lung carcinoma

A case of metastatic rectal carcinoma from lung adenocarcinoma mimicking primary rectal carcinoma on gross examination view

Mami Hatano¹, Yukiko Kishida², Hideaki Kitahara³, Naoyuki Umetani³, Takeshi Kitakawa³, Hajime Tsukui³, Hiroyoshi Morita³, Hiroo Terashima³, and Koichi Tamura²

¹School of Medicine, Oita University
Departments of ²Surgical Pathology and ³Surgery 1, Tokyo Teishin Hospital

(論文受付 2008年 8月27日)

(採用決定 2009年 1月16日)