症例報告

腸管壁血管のelastosisによると考えられた小腸イレウスの1例

湯淺　光博¹　　　岸田由起子²　　　松野　成伸³
佐藤　兼俊³　　　梅谷　直亨³　　　山本　哲久³
寺島　裕夫³　　　田村　浩一²

(¹東京大学医学部医学科，²東京逓信病院病理科，³同　第一外科)

要旨: 血管壁のelastosisを伴った小腸イレウスの報告例はまれである。症例は手術歴のない30代の男性。小腸は回腸末端から30 cmの部で著明に狭窄し，口側で拡張しており，狭窄部位は肛側の小腸と癒着して瘻孔を形成していた。患者に開腹歴はなく，切除病変において狭窄部，拡張部共に血管壁に著明な弾性線維増生（elastosis）がみられた。血管elastosisによる虚血がイレウス発生の要因と考えられ，病理所見を中心に報告する。

キーワード: small intestine, ileus, vascular elastosis

A case of small intestinal ileus caused by vascular elastosis

Mitsuhiro Yuasa¹, Yukiko Kishida², Narunobu Matsuno³, Kanetoshi Sato³, Naoyuki Umetani³, Tetsuhisa Yamamoto³, Hiroo Terashima³, and Koichi Tamura²

¹Faculty of Medicine, Tokyo university
Departments of ²Surgical Pathology and ³Surgery 1, Tokyo Teishin Hospital

(論文受付 2008年10月 6日)

(採用決定 2008年12月25日)