症例報告
巨大な多房性嚢胞像を呈した前頭蓋底部の神経鞘腫の1例
朴 美花 徳永 藏
(佐賀大学医学部病因病態科学)
要旨: 症例は41歳の男性で,2年前から嗅覚障害があった。画像上で前頭蓋底部に直径7 cm大の液面を有する多房性嚢胞状腫瘤が認められ,血管腫あるいは嗅神経芽腫が疑われ,腫瘍摘出術が行われた。割面では嚢胞成分が大部分を占め,一部で易出血性の充実性部分が見られた。組織学的に充実部では両極に繊細な線維突起を有する異型の乏しい紡錘形細胞の増殖がみられた。免疫組織化学的に紡錘形の細胞はS-100蛋白,vimentinが強陽性,lamininが一部で陽性,GFAP,EMA,CD68は陰性で,嚢胞変性を伴った神経鞘腫であった。前頭蓋底部の神経鞘腫は極めて稀で,その発生母地は不明である。
キーワード: subfrontal schwannoma, cystic change, hemorrhage, cavernous malformation
A case of subfrontal schwannoma presenting giant multiple cyst
Meihua Piao and Osamu Tokunaga
Department of Pathology and Biodefense, Faculty of Medicine, Saga University
(論文受付 2008年 8月 6日)
(採用決定 2008年11月27日)