症例報告

Histiocytic sarcomaと考えられた空腸腫瘍の1例

大谷　　博¹　　　木戸川秀夫²　　　久野　淳二³
森　　健一¹　　　伊藤　重彦²　　　柴田健一郎²
林　　洋子⁴　　　樋上　賀一⁴　　　下川　　功⁴

(¹医療法人白十字会白十字病院臨床検査科，²北九州市立八幡病院外科，³同 臨床検査科，
⁴長崎大学大学院医歯薬学総合研究科探索病理学)

要旨: 我々は，空腸に発生した多発性ポリープ状腫瘍でhistiocytic sarcomaと考えられた1例を経験したので報告する。症例は73歳の男性で，腸重積と空腸腫瘍の臨床診断のもとに空腸部分切除術が行われた。組織学的には，細胞接着性の乏しい多角形腫瘍細胞がびまん性に増生していた。免疫染色では，組織球系マーカー，一部の上皮性マーカーとCD4が陽性であった。本腫瘍および鑑別診断の対象となったsarcomatoid carcinomaは，いずれも稀な腫瘍で診断基準が曖昧であり，多数例の詳細な検討による診断基準の確立が望まれる。

キーワード: jejunum, histiocytic sarcoma, sarcomatoid carcinoma,CD68

A case of histiocytic sarcoma of the jejunum

Hiroshi Ohtani¹, Hideo Kidogawa², Junji Hisano³, Kenichi Mori¹, Shigehiko Ito², Kenichiro Shibata², Hiroko Hayashi⁴, Yoshikazu Higami⁴, and Isao Shimokawa⁴

¹Department of Pathology, Hakujyuji Hospital
Departments of ²Surgery and ³Pathology, Kitakyushu City Yahata Hospital
⁴Department of Investigative Pathology, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Science

(論文受付 2007年 8月 9日)

(採用決定 2007年11月19日)