症例報告

良悪性の診断に苦慮した巨大葉状腫瘍の1例

藤岡　真治¹　　　庄盛　浩平¹　　　新田　　晋²
鈴木　喜雅²　　　井藤　久雄¹

(¹鳥取大学医学部基盤病態医学講座器官病理学分野，²国立病院機構米子医療センター呼吸器外科)

要旨: 出血を伴う右乳房腫瘤を主訴とした60代女性である。右前胸部に小児頭大の腫瘤があり切除された。腫瘍の大きさは30×25×15 cmで腫瘍重量は2,950 g。腋窩リンパ節への転移はなかった。組織学的に腫瘍は充実性で，上皮の二層性を保つ腺管が不規則に分岐しながら増生していた。間質は細胞密度が高く，軽度の大小不同を示す類円形核を有した短紡錘形細胞からなり，軟骨や骨，脂肪や平滑筋への分化はなかった。核分裂像は10視野で4個以下であり，WHO分類では境界悪性の葉状腫瘍と考えられた。30 cm以上の境界悪性症例は比較的稀である。

キーワード: borderline malignancy, breast, phyllodes tumor

Diagnostic difficulty of the giant phyllodes tumor, report of a case

Shinji Fujioka¹, Kohei Shomori¹, Susumu Nitta², Yosimasa Suzuki², and Hisao Ito¹

¹Division of Organ Pathology, Department of Microbiology and Pathology, Faculty of Medicine, Tottori University
²Department of Respiratory Surgery, Yonago Medical Center, National Hospital Organization

(論文受付 2007年 7月21日)

(採用決定 2007年11月26日)