症例報告

異時性に多発したpapillary adenoma of type II pneumocytesの1例

熊谷久治郎¹　　　小笠原邦夫²

(¹高松市民病院検査科病理，²同　外科)

要旨: 異時性に多発した肺papillary adenoma of type II pneumocytes（PA）の一例を報告する。症例は60歳代女性，8年前，左下葉に径2 cm大，そして今回，右下葉と左上葉に径1 cm大と5 mm大の腫瘤を指摘され，全て胸腔鏡下摘出術をうけた。3個とも，異型に乏しいII型肺胞上皮様細胞やクララ細胞様細胞の固有の間質を伴った乳頭状増殖と，胞体の広い扁平上皮様細胞のシート状増殖よりなる腫瘍であった。周囲との境界は明瞭で壊死や核分裂像，脈管浸襲や浸潤像はみられなかった。免疫組織化学的検索では腺上皮には主としてCK7，SP-A，TTF-1，Synaptophysinが陽性，扁平上皮様細胞には34βE12，NSEが陽性であった。Ki-67 labeling indexは1%以下でp53は陰性であった。PAの良悪に関しては議論があるが，本例は組織学的に悪性を示唆する所見がなく，異時性多発性と考えた。

キーワード: Lung, papillary adenoma of type II pneumocytes, metachronous multiple

A case of metachronous multiple papillary adenoma of type II pneumocytes

Hisajiro Kumagai¹ and Kunio Ogasawara²

¹Devision of Pathology of Clinical Laboratory and ²Department of Surgery, Takamatsu Municipal Hospital

(論文受付 2007年 9月28日)

(採用決定 2008年 1月25日)