症例報告

子宮頸部中腎腺癌の1例
—— 細胞像と組織像の特徴 ——

安原裕美子¹　　　三上　芳喜²　　　石黒　信吾³

(¹京都府立医科大学附属病院病理部，²京都大学医学部附属病院病理診断部，
³大阪府立成人病センター病理・細胞診断科)

要旨: 子宮頸部中腎腺癌の1例を報告する。患者は58歳の女性で，腫瘍は子宮頸部側壁および後壁のほぼ全層を占拠していた。肉眼的に腫瘍は比較的周囲境界が明瞭であった。組織学的には充実性増殖が主体であったが，随所で立方状ないし低円柱状の異型細胞から構成される管腔形成が認められた。管腔内，細胞間，あるいは細胞質内には好酸性無構造でかつPAS陽性の蛋白様物質が存在していた。腫瘍の近傍には中腎管の遺残とみられる管状構造物の集簇巣が認められた。術前の頸部擦過細胞診では，細胞質に乏しく比較的均一な円形ないし類円形核を有する細胞から構成されるシート状および管状の集塊が認められた。一部の集塊ではライトグリーンに濃染する無構造物質が認められた。

キーワード: uterine cervix, mesonephric adenocarcinoma, cytology

A case report of mesonephric adenocarcinoma of the uterine cervix: characteristic of cytological and histological features

Yumiko Yasuhara¹, Yoshiki Mikami², and Shingo Ishiguro³

¹Department of Pathology, Kyoto Prefectural University of Medicine, Kyoto
²Department of Diagnostic Pathology, Kyoto University Hospital, Kyoto
³Department of Pathology, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, Osaka

(論文受付 2008年7月2日)

(採用決定 2008年9月12日)