症例報告

耳下腺に発生したsebaceous adenomaの1例

藤田　展宏¹　　　山元　英崇¹　　　瀬川　祐一¹
平川　直也²　　　恒吉　正澄¹

(¹九州大学大学院医学研究院形態機能病理学，²同　耳鼻咽喉科)

要旨: 症例は77歳女性。右耳下腺に増大傾向のある腫瘤を自覚し来院した。触診では右耳下腺に5 cm大の弾性硬の腫瘤を触知したが，顔面神経麻痺は認めなかった。臨床的に悪性腫瘍の可能性も否定できず，摘出術が施行された。組織学的には，腫瘍は線維性被膜に覆われた境界明瞭な腫瘤で，内部は脂腺細胞様の細胞が大小の胞巣を形成した充実部分と小嚢胞状の部分から構成されていた。後者では内部に好酸性物質の蓄積を認め，間質では異物巨細胞や泡沫組織球を認めた。以上より，右耳下腺原発のsebaceous adenomaと診断した。

キーワード: salivary gland, parotid, sebaceous adenoma

Sebaceous adenoma of the parotid gland

Nobuhiro Fujita¹, Hidetaka Yamamoto¹, Yuichi Segawa¹, Naoya Hirakawa², and Masazumi Tsuneyoshi¹

¹Departments of ¹Anatomic Pathology and ²Otorhinolaryngology, Graduate School of Medicine, Kyushu University

(論文受付 2008年5月23日)

(採用決定 2008年9月12日)