症例報告

神経内分泌への分化を示した肺多形癌の1例

伊禮　　功　　　西村　広健　　　定平　吉都

(川崎医科大学病理学1教室)

要旨: 80代男性。交通事故時に，偶発的に肺腫瘤を指摘された。生検にて肺癌が疑われ，左肺上葉切除となった。肉眼では，肺内に3.2×2.8 cm大の腫瘤が存在し，壊死を伴っていた。組織学的には紡錘形細胞からなる肉腫様成分，あるいは低分化な淡明細胞の胞巣状構造が主体で，一部に腺腔形成のみられる腺癌の成分とともに，濃染核を有し，胞巣辺縁での柵状配列を示す癌成分の混在が認められた。免疫組織化学的には，後者の成分はchromogranin A，synaptophysinが陽性であった。神経内分泌への分化を示した肺多形癌は稀であり，本例は多形癌の多彩な分化を考える上において，示唆に富む症例と考えられた。

キーワード: lung, pleomorphic carcinoma, neuroendocrine carcinoma

A case of pleomorphic carcinoma with neuroendocrine carcinomatous differentiation

Isao Irei, Hirotake Nishimura, and Yoshito Sadahira

Department of Pathology, Kawasaki Medical School

(論文受付 2008年1月23日)

(採用決定 2008年9月12日)