症例報告

多彩な組織像を呈した硬化性類上皮線維肉腫の1例

小林 博也1   安住  誠1   松田 佳也1
青木 直子1   佐藤 啓介1   櫻井 宏治2
立野 正敏1

(1旭川医科大学病理学講座,2 JA旭川厚生病院病理)

要旨: 80代女性で,左膝窩部皮下に発生した硬化性類上皮線維肉腫の一例を報告する。周囲との境界は比較的明瞭な2個の腫瘍があり,割面は充実性,淡黄白色で中央部に光沢を認めた。組織では中心に硝子化膠原線維の密な増生があり,細胞成分は乏しかった。その中に空隙があり線状ないし索状に並ぶ上皮様細胞の増生を認めた。周辺部では胞体の乏しい小型細胞の密な増生からなる悪性リンパ腫類似部分や,軟骨肉腫に類似する部分,好酸性胞体を有する異型細胞が胞巣状に増生する部分などが混在し多彩であった。一部に,紡錘形細胞の増生がみられ,免疫染色では上皮性マーカー陰性,vimentinのみが陽性であり硬化性類上皮線維肉腫と診断した。多彩な組織像を呈し,上皮性悪性腫瘍の転移との鑑別が問題となった。

キーワード: soft tissue, fibrosarcoma, vimentin


A case of sclerosing epithelioid fibrosarcoma

Hiroya Kobayashi1, Makoto Azumi1, Yoshiya Matuda1, Naoko Aoki1, Keisuke Sato1, Kouji Sakurai2, and Masatoshi Tateno1

1Department of Pathology, Asahikawa Medical College, Asahikawa
2Department of Pathology, JA Asahikawa Kohsei Hospital, Asahikawa

(論文受付 2008年4月14日)

(採用決定 2008年9月12日)