症例報告

卵巣子宮内膜症を発生母地とした境界悪性病変を伴う卵巣明細胞腺癌

金　　仁順^1,3　　　黒瀬　　顕¹　　　高取恵里子²
池田　真妃²　　　杉山　　徹²　　　澤井　高志¹

(¹岩手医科大学病理学第一講座，²同　産婦人科学講座，³延辺大学病院病理科)

要旨: 58歳女性の右卵巣に発生した卵巣子宮内膜症を発生母地とした境界悪性病変を伴う明細胞腺癌を経験したので報告する。右卵巣には径12 cmの大型嚢胞性病変が形成され，内腔側に結節が見られた。組織学的には大型嚢胞壁に卵巣子宮内膜症および異型子宮内膜症を認め，結節部では明細胞腺癌と境界悪性腫瘍を認めた。また子宮内膜症から腺癌への移行が見られた。卵巣良性および異型子宮内膜症と明細胞腺癌および境界悪性明細胞腫瘍が同一病変内に認められ，明細胞腺癌の発生を考える上で貴重な症例である。

キーワード: ovary, endometriosis, clear cell adenocarcinoma, borderline malignancy, atypical endometriosis

A case of ovarian clear cell adenocarcinoma with borderline malignancy arising in endometriosis of the ovary

Renshun Jin^1,3, Akira Kurose¹, Eriko Takatori², Maki Ikeda², Toru Sugiyama², and Takashi Sawai¹

Departments of ¹Pathology and ²Obstetrics and Gynecology, Iwate Medical University School of Medicine
³Department of Pathology, Hospital of Yanbian University

(論文受付 2008年3月17日)

(採用決定 2008年7月10日)